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名古屋地方裁判所 平成9年(わ)306号 判決 1997年5月23日

被告人

氏名

星野稔

年齢

昭和二二年一一月三日生

本籍

名古屋市中川区花池町二丁目四番地

住居

名古屋市中川区野田二丁目二四七番地

職業

獣医師

検察官

小峯尚士

弁護人(私選)

花井増實

主文

被告人を懲役一年六か月及び罰金二五〇〇万円に処する。

罰金を全額納めることができないときはその未納分につき二五万円を一日に換算した期間労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、名古屋市中川区野田二丁目二四七番地に居住し、同所において「星野獣医科病院」の名称で獣医業を営んでいた者であるが、自己の所得税を免れようと企て、売上げを除外するなどの方法により所得を秘匿した上、以下の各犯行を行った。

第一  被告人は、平成四年分の実際総所得金額が六六一八万九三四一円であったにもかかわらず、平成五年二月一日、同市中川区尾頭橋一丁目七番一九号所在の所轄中川税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が一二九一万二八八五円で、これに対する所得税額が二一三万四九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を通過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二七八一万九五〇〇円と右申告税額との差額二五六八万四六〇〇円を免れた。

第二  被告人は、平成五年分の実際総所得金額が六七六三万四三〇一円で、あったにもかかわらず、平成六年二月一五日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が一三六八万一〇二八円で、これに対する所得税額が二四二万二二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を通過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額二八五二万一〇〇円と右申告税額との差額二六〇九万七九〇〇円を免れた。

第三  被告人は、平成六年分の実際総所得金額が八〇八三万〇三〇四円であったにもかかわらず、平成七年二月一六日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が一九三三万三八七三円で、これに対する所得税額が三七七万三一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を経過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三三一七万九三〇〇円と右申告税額との差額二九四〇万六二〇〇円を免れた。

(証拠)

(括弧内の甲乙の番号は検察官請求番号を示す)

全部の事実について

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書三通(乙三ないし五)

2  星野眞知代の検察官調書(甲一三)

3  査察官調査書九通(甲四ないし一二)

判示第一の事実について

4  証明書(甲一)

判示第二の事実について

5  証明書(甲二)

判示第三の事実について

6  証明書(甲三)

(法令の適用)

一  罰条

各事業年度毎に

所得税法二三八条

犯行の態様は、被告人自ら経理も担当し、売上が他人に分からないように配慮し、売上を除外する方法である。そして、被告人は、証拠となるレジペーパーを破棄し、除外した金額を帳簿に記帳して申告していた。

また、ほ脱した所得は、現金あるいは、無記名債券や貴金属(金、地金等)の形で留保しており、その犯行態様は極めて悪質である。

被告人は、蓄財のために継続的に脱税していたのであって、その動機に酌むべきところはなく、被告人の責任は重い。

二  しかしながら、起訴された三年分を含めて、平成元年分から同七年分までの七年分の申告の修正申告をしており、その本税、重加算税、延滞税を全て完納していること、今回の査察調査を契機として依頼した顧問税理士の指導を受けて、有限会社を設立し、経理を法人組織で管理するなどして適正な経理処理を行ない、正確な売上把握に努めていること、また、前科・前歴のない被告人にとって、今回初めて正式な裁判を受けたことから、本件につき深く反省する機会を与えられたという事実も認められる。

三  そこで、裁判所は、これらの事情も併せ考慮して、被告人を懲役一年六か月及び罰金二五〇〇万円とするが、今回に限り、懲役刑については、その刑の執行を三年間猶予するのが相当であると判断した。

(求刑 懲役一年六か月及び罰金二五〇〇万円)

(裁判官 久保豊)

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